第97回 「桃の天然水伝説」は本当か
しばしばネットで都市伝説として扱われることの多い「桃の天然水CM伝説」。
CMに出演した女性タレントが次々に不幸に見舞われていることから都市伝説になったようだが、果たして本当に、「桃の天然水」のCMは「呪われたCM」なのだろうか?
「被災」したタレントは、華原朋美、浜崎あゆみ、村田洋子、吉井怜、神戸みゆきの5人。
逆に、「被災」していないタレントは、大谷みつほ、三津谷葉子、デヴォン青木
| 被災者 | 放送年 | 被災年 | |
| 華原朋美 | 1998 | 1999 | 出演直後に小室と破局、さらに事務所もクビにされた。 |
| 浜崎あゆみ | 1999 | 2008 | 突発性難聴のより左耳の聴力を完全に失った。 |
| 村田洋子 | 2000 | 2000 | 2000年4月に突然引退、復帰後に理由は急病によるものだと明かした。 |
| 吉井怜 | 2000 | 2000 | 急性骨髄性白血病を発症、骨髄移植を受けたがその治療により不妊に。 |
| 神戸みゆき | 2000 | 2008 | 心不全により、24歳という若さでこの世を去った。 |
確かに、8人中5人が「被災」したとなれば、これは異常である。
しかし、浜崎あゆみ、神戸みゆきに限って言えば、「被災」したのはCM放送から8年以上経ってからなので、他の3人と同等に考えるのは妥当性を欠いているとしかいえない。
検証するために、前提条件として、以下のように3つの仮定をする。
日経トレンディネットによると、2007年度に東京5局で放送されたテレビCMの総数は、2045社・9595銘柄・17996作品もあるとのこと。
そのほかの年度は詳しく分からなかったので、計算しやすいように、1998年のCMの総数を10000作品と仮定して計算を進める。
1人で多数のCMに出演したタレントも多かろう。ここでは、1998年に1度でもCMに出演したことのあるタレントの人数を1000人と仮定する。他の年も同数だと仮定する。
すると、条件1より、1998年にCMに出演したことのあるタレントの内、1999年までに何らかの不幸にあったタレントは10人もいることになる。1998年〜2001年の3年間では30人いることになる。
また、条件2と3から、特定のテレビCMには3年間で3人のタレントが出演しているので、この3人が受難する確率は、100万分の1となる。CMの総数は10000作品もあるので、同じCMで交代したタレントが3人連続で受難するということが1998年〜2001年の3年間に日本で起きる確率は100分の1。
この時代だけで比べると少ないが、1980年〜2010年の30年間で比べれば、期間が10倍に伸びたので起きる確率は10分の1となる。
たしかに、タレント個人個人が受難する確率自体はそれほど高くない
「桃の天然水」のCMで、出演者が次々に不幸に見舞われる確率は低い。
しかし、日本で莫大な数のCMが放送されたことを考えてみれば、特定のCMで受難者が連続することは、それほど少ないことだといえるだろうか。
宝くじで1等が当選する確率より、はるかに高い。
こういう出来事が「偶然」なのか「怪奇現象」なのか、我々は区別することができない。
数的にも十分、「偶然」で済まされる範囲であり、怪奇現象を持ち出す必要は無い。わざわざ怪奇現象を持ち出さなくても、十分に説明がつくし、すっきりしている。