第108回　石橋をすっ飛ばすエネルギーの大きさ

久しぶりの数学ネタ更新。
今回のネタは、タイトルだけでは何が言いたいのかさっぱり分からないだろう。
今回の題材は、万城目学の小説「偉大なるしゅららぼん」である。
正直言って、この小説を読んでいない人はこのネタを見てもまったく分からないと思うので、読んでから見て欲しい。

第四章の最終場面。池の水と石橋が空高く飛んでいった場面である。
このような現象が起きるためには、どのくらいのエネルギーが必要だろうか?

池の水と石橋の合計質量を M 、滞空時間を t とする。
最高到達高度を h とすると、hまで水と石橋が到達するまでにかかる時間は t/2 である。
最高点に到達するまでは加速度 g の等加速度運動をするから、
h = (1/2)g × (t/2)² = (1/8)gt²

必要なエネルギーは、
Mgh = Mg×(1/8)gt²=(1/8)Mg²t²

よって、エネルギーは質量に比例し、時間の2乗に比例する。

ここからは具体的な数値計算に移ろう。
マンガやアニメや映画と違い、小説の文字だけからエネルギーを推定するためには、ある程度は想像するしかない。

仮に、池の水と石橋の合計質量を M = 10t = 10⁴kg、滞空時間を t = 1分 = 60秒 とすると、エネルギーは4.3×10⁸ J と計算される。
今度は、M = 2×10⁴kg、t = 5分 = 300秒 とすると、エネルギーは 2.2×10¹⁰ J と計算される。

かなりおおざっぱだが、エネルギーは10⁸ 〜 10¹⁰ J のオーダーである。

TNT火薬1トンの爆発エネルギーが4.184×10⁹ J 、石油1トンの化学エネルギーが4.187×10¹⁰ J であるから、このエネルギーがいかに大きいかが分かるだろう。

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