第109回 「劇場版TRICK 霊能力者バトルロイヤル」の検証
2011年6月12日に早くもテレビで放送された「劇場版TRICK 霊能力者バトルロイヤル」であるが、はっきり言って、筆者には気になることが一つある。
それは松宮佐和子(演･三浦理恵子)の謎の能力である。
作中といっても回想場面だが、
といった驚異的な能力が描写されていた。これには、筆者の科学魂が揺さぶられてしまう。
今まで超能力関連のネタを何度か扱ってきたが、念力は対象物との距離の2乗に反比例すると考えて間違いないだろう。
とはいえ、それだけでは分からない。真っ正面からこの難問にぶつかると難しい。
宇宙に存在する、念力に似た相互作用を考えてみよう。
このような念力の類は、離れて働くという点では重力や電磁気力に似ている。
ところで、重力や電磁気力のような離れて働く力は、2通りの解釈が可能である。
後者の方が近代的である。重力が時空ゆがみである、と解釈する一般相対性理論は後者である。
今まで筆者は「数学ネタ」で超能力を扱うときは遠隔作用として扱ってきた。
今回は近代的な考えに改め、松宮佐和子の念力を近接作用で考えてみる。
1と3についてはこれで説明ができそうである。つまり、松宮佐和子は時空を歪ませている、と解釈するのである。
それなら、時空のゆがみの大きさを変えることでグラスを動かしたり破壊したりできるだろう。
それならば、なぜ時空を歪ませることができるのだろうか？
時空を歪ませるためには、大質量の物体が必要である。
松宮佐和子が体内にLHCのような加速器を持っており、そこで衝突を起こしてミニブラックホールを生成する…？
いや、ダメだ。ブラックホールといっても、加速器で創られるブラックホールは重力が小さすぎる。
では、未知の原理の存在を強引に仮定するほかない。すると、答えの1つは、
松宮が未知の相互作用をもたらす波を発生させる装置(機構)を体内に持っている
この場合、この相互作用を伝達する粒子の存在も仮定する必要がある。
重力を伝達する粒子として「重力子」なるものが仮定されているが、これと同じ考え方である。
この粒子を「松宮粒子」と呼ぶことにしよう。
ここで松宮粒子が電荷も持っていると仮定すると、うまくやれば空気中の水を集めることが可能である。
この理論の場合、作中で描写された松宮の3つの能力をすべて説明できる。
もう1つの答えは、
松宮が質量と関係なく重力波を発生させる装置(機構)を体内に持っている
である。これなら、持ち出す未知の物理現象を最小限にすることができる。
しかし、2の能力が説明できない。
よって、
松宮が未知の相互作用をもたらす波を発生させる装置(機構)を体内に持っている
が、答えとして適切であろう。
それにしても不思議である。東大出身の鈴木玲一郎は、なぜこう考えずに「霊能力を発見」として発表してしまったのだろう？
「未知の相互作用を発見」として発表すれば、松宮が自殺することもなかっただろうし、物理学上の世紀の大発見となりノーベル賞を獲得できた可能性も高い。
人の行動というものは、超能力よりも実に不思議だ。