第118回 クレイトン渓谷の深さ
クレイトン渓谷(Clayton Ravine)は、映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」に登場する地名である。
同作品の3作目では、1885年におけるこの渓谷に向かう線路で、デロリアンを機関車で押して加速してマーティーが現代への帰還を果たす。
デロリアンが現代へタイムスリップした後、機関車はそのまま渓谷へ落下していった。
そこで疑問が湧いた。
この渓谷の深さはどのくらいだろうか?
単純にストップウォッチで測定すると、機関車が谷底に落下するまでに8秒かかっている。
これを元に計算すると渓谷の深さは300m以上あることになる。しかし、映画を見ている限りそこまで深いとは思えない。
つまり、落下の場面にはスローモーションが掛かっていると考えられる。
全く別の方向から検討してみよう。
クレイトン渓谷へ向かう線路は、幹線路線から分岐した支線である。
劇中では、その長さは3マイル (≒4.8 km)であるとされている。
デロリアンがタイムスリップするためには、88マイル/h (≒142 km/h)の速度を出す必要がある。
デロリアンは支線の分岐点から 0.5マイルの地点に置かれていた。
それゆえ、デロリアンが加速するのに使える距離は2.5マイル (≒4.0 km)である。
ここで、デロリアン(を押す機関車)は直線的に加速したと仮定する。
その場合は、デロリアンが加速しながら2.5マイルの道のりを走りきるのにかかった時間は204秒と計算される。
一方で、劇中でデロリアンが加速しながら2.5マイルの道のりを走りきるのにかかった時間は425秒であった。
従って、加速の場面にはスローモーションが掛かっており、その倍率は2.08倍である。
声までは速くなっていなかったが、平均的に2.08倍に伸ばされていたということだろう。
このスローモーション倍率が、機関車が谷底に落下する場面でも共通であったと仮定する。
その場合、機関車が落下するのにかかった時間は3.8秒程度となる。
すると、クレイトン渓谷の深さは72.5mと計算される。
このくらいの深さであれば妥当な計算結果ではなかろうか。